Photographer | Film maker
volume 0
「dear yesterday」
拝啓
ひさしぶり。僕の言葉が届いているだろうか。
四季は巡り、長い時間が経った。僕の手のひらに刻まれた皺もだんだんとその表情を変えてきたように思う。
君はどんなふうに暮らしているのだろう。
僕は日に何度か君のことを思い出そうとするが、どうにもピントが合わない。
それなのに、脳裏ではいつも鮮烈に、その姿と景色を投影しつづけている。
花の蕾がほころぶとき、木が揺れるとき、星が瞬くとき、僕の心はいつもどこか遠くで揺蕩う。波のさざめきの間に僕がいて、空の青さのなかに君がいた。
僕はそんな君の姿を写し直すために、この手紙を書いた。
忘れられない、忘れたくない、忘れてしまいたい君について。
このささやかな邂逅を、どうか見届けてほしい。それじゃあ、またいつか。
敬具
追伸 この記憶は誰かのものであり、そして誰のものでもない。
今森茉耶 (Seju)
紗和 (seju)